三東工業社、ベトナム人新卒を正社員に 資格取得支援
はたらく
滋賀県地盤の建設会社、三東工業社がベトナム人の大学新卒者を正社員として採用し始めた。給与や福利厚生などの待遇は日本人社員と同じ。男女5人が即戦力となっている。
女性社員のホアン・トゥ・フエンさんは国立ハノイ水利(トゥイロイ)大学を卒業後の2018年に入社した。橋や堤防の3次元画像の作成やドローンを使った測量をこなす。「アニメなどの文化に触れ、日本で働きたいと思った」という。男性社員のレー・ヴァン・ミン・コンさんは同大学を卒業して、19年に来日し20年に入社した。現場監督の支援や測量、日報作成などを担当する。
日本の建設現場では技術者が不足している。特に地方で深刻化しており、三東工業社は土木・建築を学んだ理系の新卒者をここ数年、採用できていない。
同社は民間の日越人材開発雇用促進プロジェクトを活用して、17年に初めてベトナムの土木系大学の学生の採用面接に参加した。細川礼昭・専務執行役員は「当初2人の予定だったが、優秀で熱意のある学生が多く、4人の採用を決めた」と話す。15年に始まった同事業を通じて国内63社が209人を採用しているという。
採用した学生は「技術・人文知識・国際業務」の従事者として在留資格を得る。入社前には、奥田克実社長がベトナムに赴いて家族と面談する。「食事しながら、会社や仕事の内容を説明している。日本で安心して働くために、家族の理解は大切だ」という。
フエンさんらベトナム人社員の3人は毎週金曜の午後に4時間、2級土木施工管理技士の勉強をしている。現場監督となるのに必要な国家資格だ。日本人社員は専門学校で学ぶが、言葉の壁に配慮して既に資格を持つ社員3人がマンツーマンで指導する。コンさんは「3年後には1級の資格を取りたい」と話す。
異国で働きながら学ぶ姿は日本人社員にも刺激になっている。文系の大卒者でエンジニアを支援する部署にいる女性社員2人が金曜の社内講習に参加。土木施工管理技士の取得やCAD(コンピューターによる設計)の習得に意欲をみせているという。
今は新型コロナウイルス禍でベトナムでの採用活動は見送っているが、定期的な採用を続ける方針だ。ベトナム語版の会社案内も作成する。
(木下修臣)
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